ファクタリングを活用した資金調達を検討している経営者や経理担当者の皆様にとって、最も重要かつ複雑な課題の一つが「適切な会計処理」です。売掛金の現金化という一見シンプルな取引も、会計基準に則った正確な仕訳や税務処理を行わなければ、後々大きな問題に発展する可能性があります。特に、EY新日本有限責任監査法人などの大手監査法人が示すガイドラインや、国際財務報告基準(IFRS)への対応は、企業の財務透明性を保つ上で欠かせません。本記事では、ファクタリングの基本的な会計処理から、買取型・保証型の具体的な仕訳方法、さらには手数料の勘定科目や消費税の取扱い、キャッシュ・フロー計算書での表示方法まで、実務で必要となる知識を体系的に解説いたします。
1. EY新日本有限責任監査法人が解説するファクタリングの会計処理とは?基本を押さえよう

ファクタリングは、企業が売掛金を現金化し、迅速に資金を調達するための有効な手段として、多くの企業に利用されています。しかし、その会計処理に関しては、いくつかの重要なポイントを理解しておく必要があります。本記事では、EY新日本有限責任監査法人の見解を基に、ファクタリングにおける会計処理の基本を詳しく解説します。
ファクタリングの基本概念
ファクタリングとは、企業が持つ売掛金(売上債権)をファクタリング会社に売却することで、速やかに資金を調達する方法を指します。この手法により、企業は資金繰りを効率化し、営業活動を円滑に行うことが可能です。
ファクタリングの会計処理のポイント
ファクタリングの会計処理においては、以下のような基本的なルールが存在します。
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売掛金の売却:
ファクタリングは売掛金の譲渡を伴う契約であり、売却した時点で、その金額を「未収入金」として振り替える必要があります。 -
手数料の扱い:
ファクタリングに伴う手数料は、「売上債権売却損」としてしっかり記録することが求められます。この手数料は損金として計上可能であり、正確な記帳が重要です。 -
借入金との区別:
ファクタリングは融資とは異なるため、借入金とは明確に分けて考えます。ファクタリングを利用しても、企業の負債が増えることはありません。 -
消費税の取扱い:
ファクタリング取引は、消費税が非課税の取引として認識されます。そのため、消費税の計算に影響を与えない点も重要です。
会計処理の具体例
ファクタリングの具体的な会計仕訳について、2社間と3社間のケースを見てみましょう。
2社間ファクタリングの仕訳例
- 商品・サービスの販売
- 売掛金 XXXX
- 売上 XXXX
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仮受消費税 X
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2社間ファクタリング契約の締結
- 未収入金 XXXX
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売掛金 XXXX
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売掛債権の売却・入金
- 現金預金 XXX
- 未収入金 XXXX
- 売上債権売却損 X
3社間ファクタリングの仕訳例
- 商品・サービスの販売
- 売掛金 XXXX
- 売上 XXX
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仮受消費税 X
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3社間ファクタリング契約の締結
- 未収入金 XXXX
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売掛金 XXXX
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売掛債権の売却・入金
- 現金預金 XXX
- 未収入金 XXXX
- 売上債権売却損 X
これらの会計処理を適切に行うことで、ファクタリングを活用する企業は、資金調達を行いながらも、財務の透明性を保つことが可能です。ファクタリングの仕訳や会計処理を理解することで、企業全体の財務状況をより効果的に管理する手助けになります。
2. 国際財務報告基準(IFRS)におけるファクタリングの会計処理-EYの見解を理解する

国際財務報告基準(IFRS)におけるファクタリングの会計処理は、企業の財務報告において非常に重要な要素です。EY新日本有限責任監査法人の見解を基に、ファクタリングの正確な処理方法を理解するために重要なポイントを以下に示します。
ファクタリングの基本的な定義と会計処理の流れ
ファクタリングとは、企業が売掛金を迅速に現金化する手法のことを指します。主に資金調達の方法として用いられ、IFRSにおける処理は契約の種類や取引の性質によって変わります。
- 買取型ファクタリング:企業は売掛金をファクタリング会社に売却し、即座に現金を受け取ります。この方式により、流動性が向上し資金繰りが改善されます。
- 保証型ファクタリング:売掛先の倒産リスクに備え、ファクタリング会社が保証を提供します。これにより、未回収のリスクを抑えることが可能です。
会計処理における重要な考慮事項
ファクタリングに関連する会計処理には、いくつかの重要な点が存在します。
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資産の認識と測定:ファクタリング契約によって資産がどのように扱われるかは非常に重要です。企業が売掛金をファクタリング会社に譲渡した場合、その売掛金は資産から除外する必要があります。
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キャッシュフローの分類:キャッシュ・フロー計算書において、ファクタリングの関連費用は、営業活動から生じるキャッシュ・フローもしくは財務活動によるキャッシュ・フローに分類されることがあります。この分類は、負債が企業の運転資本に含まれるかどうかに依存します。
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非資金取引の扱い:IFRSの規定により、現金を使用しない取引はキャッシュ・フロー計算書に含めないことになっています。そのため、ファクタリングに関連する非資金取引は、財務諸表の他の部分で適切に開示されることが求められます。
複雑な取引構造の理解
国際的な基準を適用する企業では、ファクタリング契約の内容が複雑になることがしばしばあります。契約の条件によっては、標準的な仕訳とは異なる会計処理が必要となる場合があります。そのため、契約の詳細を十分に把握し、専門家の見解を得ることが必須です。
このように、IFRSにおけるファクタリングの会計処理は、多角的な視点が求められる難易度の高い分野です。企業はこれらの基準を遵守し、透明性のある財務報告を行うことが強く求められています。
3. 買取型・保証型ファクタリングの仕訳方法を具体例で徹底解説

ファクタリングの会計処理は、その種類によって異なるため、理解が重要です。本記事では、買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの具体的な仕訳方法を詳しく解説します。
買取型ファクタリングの仕訳方法
買取型ファクタリングは、売掛金をファクタリング業者に売却することで、迅速な資金調達を実現する手法です。以下に、実際の仕訳方法を示します。
1. 売掛金の発生時
売掛金が新たに発生した際の仕訳は、以下のように記録されます。
- 借方: 売掛金
- 貸方: 商品売上
この仕訳により、売上が記録され、同時に売掛金が発生します。
2. ファクタリング契約の締結時
ファクタリング契約を締結したときは、特に仕訳を行う必要はありませんが、契約内容や金額を正確に記録しておくことが重要です。
3. ファクタリングによる入金時
ファクタリング会社から資金が入金された際の仕訳は、次のようになります。
- 借方: 現金預金(または該当の預金口座名)
- 貸方: 売掛金
この仕訳では、売掛金が現金化されたことを反映し、その金額を貸方に計上します。
保証型ファクタリングの仕訳方法
保証型ファクタリングは、売掛金の貸し倒れリスクを軽減するために、保証金を支払う仕組みです。この場合の仕訳方法は以下の通りです。
1. 保証料の支払い時
保証型ファクタリングを契約する際に、保証料を支払った場合の仕訳は次のとおりです。
- 借方: 支払手数料(保証料)
- 貸方: 現金預金
保証料は非課税として扱われるため、消費税は発生しません。
2. 貸倒時の仕訳
売掛金が回収不能となった場合の仕訳は、次のようになります。
- 借方: 貸倒損失
- 貸方: 売掛金
この仕訳を通じて、貸倒損失が記録され、会計帳簿に反映されます。
3. 保証金の受け取り時
保証型ファクタリングにおいて、保証金を受け取った際の仕訳は次の通りです。
- 借方: 現金預金
- 貸方: 雑収入(または保険金収入)
この収入は営業外の収益として計上されるため、注意が必要です。
まとめ
買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの仕訳方法は、資金調達やリスク管理を目的としたさまざまなケースに基づいています。具体的な仕訳の理解を深めることで、自社に最適なファクタリングの選択や会計処理を効率的に行うことが可能になります。ファクタリングの会計処理を正しく理解し、EYの指針を参考にしながら適切な手続きを進めていきましょう。
4. ファクタリング手数料の勘定科目と消費税の扱い方-税務の落とし穴に注意

ファクタリングを利用している企業にとって、手数料の正しい処理は非常に重要な要素です。手数料が会計処理上、どのような勘定科目に当てはまり、消費税にどのように関わるのかを理解しておくことが求められます。
ファクタリング手数料の勘定科目
ファクタリング手数料は通常、「売上債権売却損」または「支払手数料」に分類されます。それぞれの勘定科目に関する詳細を以下に示します。
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売上債権売却損: 売掛金をファクタリングを通じて売却することで発生する損失を示します。この勘定科目は、ファクタリングによって生じた損失の実態を正確に反映させるために欠かせません。
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支払手数料: 一部の企業では、手数料を「支払手数料」として処理するケースもあります。これはファクタリングに関連する様々な費用を整然と管理する手法です。
ファクタリングに伴う損失が税務上どのように影響するかも重要です。税務調査の際には、適切な勘定科目の選択が求められるため、記録の厳密性が不可欠です。
消費税の扱い
ファクタリング取引において鍵となるのが消費税の処理です。ファクタリング手数料は消費税の対象外であるため、以下の点に注意が必要です。
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非課税取引: 国税庁によると、ファクタリング取引は「金銭債権の譲渡」と見なされ、消費税は非課税とされています。そのため、税務上、ファクタリング手数料に消費税を含める必要はありません。
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悪質な事業者に注意: 一部の不正な業者がファクタリング手数料に消費税を加算して請求することがあります。契約に記載された金額が本当に非課税であるか確認することが重要です。
注意すべき税務上の落とし穴
ファクタリング手数料の会計処理を行う際には、いくつかの税務上の落とし穴が存在します。以下に主なポイントを整理しました。
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勘定科目の誤った使用: 売上債権の売却による損失を適切に記録しないと、税務署からの疑いを招くことがあります。
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消費税の誤申告: 非課税取引であるにも関わらず、消費税を間違って申告する可能性があるので、十分な注意が必要です。
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記録管理の不備: 取引の詳細な記録をきちんと保つことが必須です。特に、売掛債権の存在を証明するための契約書や請求書などの証明書類は欠かせません。
これらの点を意識し、ファクタリング手数料を適切な勘定科目で計上し、消費税に関する誤解を避けることが大切です。正確な処理を行うことで税務リスクを低減し、会計業務の効率を向上させることができるでしょう。
5. キャッシュ・フロー計算書での表示方法とEYアジェンダ決定のポイント

ファクタリング契約に関連したキャッシュ・フロー計算書の表示方法の理解は、企業の財務状況を明確に伝える上で欠かせない要素となります。最近のEYのアジェンダに基づく判断では、企業はファクタリングに関する報告の一貫性を確保するために重要な点を考慮することが求められています。
貸借対照表上の負債の分類
ファクタリングに関連する負債の会計処理では、以下のような分類が重要です:
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営業活動によるキャッシュ・フロー:ファクタリング契約による負債が、買掛金や未払金と関連付けられる場合、これらの支払いは営業活動に起因するキャッシュ・フローとして扱われます。これは企業の主たる収益活動に基づくもので、合理的な分類となります。
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財務活動によるキャッシュ・フロー:逆に、負債が借入金として認識される場合、その返済は財務活動のキャッシュ・フローとして分類されます。この取り扱いは、企業の資金調達活動を見極める上で重要です。
非資金取引の扱い
加えて、金融機関が提携先に直接資金を送金する際の買掛債権の減少は、非資金取引として扱われます。この考え方は、キャッシュ・フロー計算書で現金の移動を伴わない取引を除外する方針に基づくため、企業はファクタリング契約に関連する情報を的確に財務諸表に反映させる必要があります。
EYのガイダンスに基づく実務対応
EYの指針に従い、企業が注意すべきポイントは以下の通りです:
- キャッシュ・フロー計算書の作成時には、営業活動と財務活動の分類を明瞭に行うこと。
- ファクタリング契約において、取引の性質が現金の流れに与える影響を適切に評価すること。
- 関連情報を財務諸表に正確に開示し、投資家や関係者に対して透明性を持つこと。
これらの要点を徹底することにより、企業は财务報告の精度を向上させ、より効果的なリスク管理を実現できるでしょう。ファクタリングの会計処理は専門的な知識を要しますが、EYのガイダンスを参考にして適切に対応することが期待されています。
まとめ
ファクタリングは企業にとって重要な資金調達手段ですが、その会計処理には細かなルールが存在します。本記事では、EY新日本有限責任監査法人の見解に基づき、ファクタリングの基本的な会計処理の流れや、IFRSにおける取り扱い、さらには手数料の勘定科目や消費税の扱い方、キャッシュ・フロー計算書への反映方法など、ファクタリングに関する重要なポイントを詳しく解説しました。ファクタリングを効果的に活用するためには、こうした会計処理の理解が不可欠です。企業は適切な処理を行い、正確な財務報告を行うことで、健全な財務体質の維持と信頼性の向上につなげることができるでしょう。
よくある質問
ファクタリングの会計処理における重要なポイントは何ですか?
ファクタリングの会計処理においては、売掛金の売却、手数料の扱い、借入金との区別、消費税の取扱いが重要なポイントです。売掛金を「未収入金」として振り替え、手数料を「売上債権売却損」として記録し、ファクタリングと融資を明確に区別することが求められます。また、ファクタリング取引は消費税が非課税の取引として認識されるため、正しい申告が重要です。
IFRSにおけるファクタリングの会計処理の特徴は何ですか?
IFRSにおけるファクタリングの会計処理では、資産の認識と測定、キャッシュフローの分類、非資金取引の扱いが重要な考慮事項です。売掛金の譲渡によって資産が減少する点や、関連費用の営業活動または財務活動への分類、現金を使用しない取引の開示が求められます。また、複雑な取引構造への対応も必要となります。
買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの仕訳方法に違いはありますか?
買取型ファクタリングでは、売掛金の発生時、ファクタリング契約締結時、ファクタリングによる入金時に仕訳を行います。一方、保証型ファクタリングでは、保証料の支払い時、貸倒時、保証金の受け取り時に仕訳が必要です。両者の違いは、資金調達やリスク管理の目的に基づいて異なる会計処理が行われる点です。
ファクタリング手数料の会計処理で注意すべき点はありますか?
ファクタリング手数料の会計処理では、「売上債権売却損」または「支払手数料」の勘定科目を選択することが重要です。また、ファクタリング取引は消費税が非課税であるため、消費税の誤申告には十分注意が必要です。さらに、取引の詳細な記録を適切に保つことで、税務上のリスクを低減できます。